なぜ、独立した方が単価が高くなるのか
会社というのは「看板」という役割も果たしています。
ただし、「看板」にプラスの価値を持たせることができる会社は、このIT業界ではごく一部だけです。
この業界では、3重派遣4重派遣がメインの会社が多いですが、このような会社では看板に価値を持たせることができません。「看板」もなく営業力も弱い会社は、エンジニアに付加価値を持たせることができません。このような会社に所属している場合、フリーランスで仕事をするよりも単価が安くなってしまう場合があります。
フリーランスエンジニアAさんの例
私の知り合いのフリーランスエンジニアのAさんもそのパターンでした。彼は中小ソフトハウスに在籍しており、単価60万円で客先常駐していました。彼は30代後半のベテランエンジニアでしたが、会社の営業力が弱く商流が長いため、スキルの割に単価が安く、会社員エンジニアとしてはかなり安い単価で契約されられていました。
彼の年収は400万円台でした。単価から考えると還元率はかなり高い基準ですが、彼のスキルからすれば、正直なところ安いと言わざるを得ない水準です。
というわけで、彼は独立したわけですが、すぐに売上1000万の大台を突破することができました。会社員時代に築いたコネを利用し、クライアントと直接契約することで、会社員時代よりも高い単価で契約することができたのです。
なぜ、独立後の方が単価が高くなるのか
このような単価の逆転現象は、Aさんに限った話ではありません。むしろ、かなり「よくある話」です。
では、なぜ、このような現象が起きてしまうのでしょうか。
エンジニアの多数が所属する中小ソフトハウスでは、稼働率を重視する場当たり的な営業をしています。 また、実態は労働者派遣業ですから、エンジニアに付加価値を持たせるということができません。営業も自社のエンジニアの価値がわかっていません。
そもそもエンジニア派遣は薄利です。「数を打ち込む」ことが重要なわけです。
結果として、前述のような状態になってしまいます。
一方でフリーランスは自分自身のみが商品です。数ある案件の中から一番条件のいい案件のみを取ればいいんです。稼働率のために安い案件を無理に受ける必要はないんです。
また、仕事の探し方についても柔軟性があります。自分の名前を利用して商流の上流のクライアントに対して直接売り込みをかけた方が会社員時代よりも良い条件で契約が取れます。
まとめ
極論を言ってしまえば、「営業力の低い会社に在籍するメリットはない」ということです。このような存在意義のない会社に所属しているエンジニアはさっさと独立してしまった方がいいでしょう。
正直なところ、中小ソフトハウスの 単価は安すぎると思います。ベテランでも60万〜80万ですからね。単価の相場がフリーランスと変わりません。
それを考えると、むしろ、フリーランス個人で「By Name」のアサインを獲得した方が条件のいい案件が取れると思います。
なお、仕事の探し方については、以前以下のエントリを書きました。ご参考まで。
新卒フリーランスなんて正直やめておけと思う
新卒でフリーランスになるものいいじゃないかという風潮があります。
個人の自由ですから、勝手にしてくださいというところなのですが、私自身のフリーランスとしての経験や、個人的な価値観からすると、「まぁ、おとなしく2,3年は会社員やっとけ!」と言いたいのが正直なところです。
ちなみに、
といったように、我らがレバなんとなさんが煽っておりますが、新卒でフリーランスになんかになってしまっては、エージェントのカモですね(といっても、まぁエージェントと関わらなくても、純粋無垢な若者なんてどこへ行ってもカモにされるだけだと思いますけどねw)。
そんなわけで、純粋無垢な若者が冷静に身の振り方を検討できるように、会社員になるメリットを強調したいです。
- フリーランスにはいつでもなれるけど、大企業は新卒のときにしか入れない
- 新人研修を受けることができる
- コネが作れるので、フリーランスになってからも営業が捗る
- そもそも技術力さえあれば稼げるというのは、ほぼ間違い
- まとめ
フリーランスにはいつでもなれるけど、大企業は新卒のときにしか入れない
零細企業はまだしも、そこそこの大企業に就職するならば、やはり新卒が有利です。
逆に、会社員経験のないフリーランスがこの手の企業に就職するのは難しいです。
大企業は教育もきちんとしていますし、待遇もいいです(もちろんその企業によりますが)。
それを試しもしないで、選択肢から除外しちゃうなんて純粋にもったいなくないですか?
フリーランスなんていつでも成れるんだから、見とくだけでも見ておけばいいのにと思います。
会社なんて嫌だったらいつでもやめれますしね。
新人研修を受けることができる
大企業の新人研修ってメチャクチャお金がかかってます。教育がしっかりしている会社では、丸々一年間教育していたりしますが、一人当たり百万単位のお金がかかっていると思います。その間にお金も貰えますし、職業訓練校として考えればすごく優良です。
コネが作れるので、フリーランスになってからも営業が捗る
このブログでは今までコネの重要性をかたってきましたが、これが一番のメリットだと思います。
自分が今やってこれているのも会社員時代のコネのお陰です。
会社員時代の同僚が、他社に転職してそこから仕事を持ってきてくれるなんてこともあります。
フリーランスだとそれがないですね。まぁ、フリーランス同士でも付き合いはあるでしょうが、人間関係が疎結合が分だけ、ある程度まとまった人間関係を作ろうと思うと難しいです。
その点、会社は出会い系としてはかなり優秀であると思うんですよね。
そもそも技術力さえあれば稼げるというのは、ほぼ間違い
なんかこの手のフリーランスを勧めるエントリは問題を単純化しすぎているような気がします。
「シンプルに考えればいいです!」という文句が多いですが、実際の社会はそんなに単純じゃないですからね。
仕事以外でも学歴とか資格とか見られたりしますし、肩書も重要だったりしますし。
まぁ、よく分からないんだったら、「右へならえ」が正直無難だと思っています。
もちろん、ずば抜けた能力があれば別ですよ。でもそんな人って一握りじゃないですか。だから、おとなしく就職しておいて、様子を見て今後の身の振り方を考えるというのも悪くないと思うんですよね。
それを踏まえずに、とりあえずシンプルに考えればOK!ってのは、正直なところ純粋無垢な学生を騙そうとしているのかなぁとか思っちゃいます。
まとめ
フリーランスでも会社員でも、結局のところ、プラットフォーマーの上で踊らされるだけなんですよね。
フリーになったところで、エージェントなんかの鵜飼の鵜になるだけですし。まぁ我々個人の力などたかが知れています。本質的なところでは大差ないと思っています。
だからこそ、フリーランス、会社員の枠にとらわれずに、今後どういう風に生きていくかを考えないといけないと思います。そのうえでメリットデメリットを考慮し、必要があればフリーランスを選択すればいいのではないでしょうか。フリーランスになることを目的にするのは違うと思います。
貴重な新卒の切符です。エージェントに騙されないでくださいね。
あ、ちなみに私は、新卒で就職しましたが、その会社は半年でやめていますw
頑張らずに儲けることがフリーランスの醍醐味
会社員は頑張らなければなりません。しかし、その目的は成果を出すためではなく、頑張る姿勢を周囲に見せるためです。
上記の記事にもあるとおり、連合会長でさえ、「頑張り=収入」と捉えています。この考え方を前提にしてしまうと、そもそも生産性を上げようなどとという発想が出てきません。寝てても金が稼げる仕組みを作ることが理想だと思いますが、そんなことは許されません。
一方、フリーランスは全く異なります。フリーランスの収入は頑張りではなく、成果に対して支払われます。よって、収入を上げるためには生産性を上げなくてはいけません。
これは逆に言えば、頑張らずに儲けることもできるということです。これはフリーランスをやる上での大きなメリットではないでしょうか。
フリーランスの一番のデメリットは、会社員が馬鹿らしくなってしまうこと
フリーランスになった時に、先輩フリーランスの方から「フリーランスは三日やったらやめられない」と言われたことがあります。
その時は、ただ単に「ふ〜ん」としか思っていなかったのですが、フリーランスも4年目になって考えてみると、「たしかにフリーランスはやめられん」とひしひしと感じます。
フリーランスをやっていて感じる、一番の魅力は仕事の選択権です。
会社員の時には、会社が選んだ案件に突っ込まれるしかありませんでした。参画した時点で無理ゲーな案件もありましたし、無茶な案件であると会社にアピールしてもなかなか撤退させてくれません。
一方、フリーランスではそのあたりを柔軟に自分自身で調整することができます。また、仮に案件に参画してみて合わなければ、抜けることもできます。この業界にはたまーに、周りのエンジニアをいじめることを生き甲斐としているような人間がいたりもしますが、そういう変な人間がいたら逃げることができます。
「IT業界=ブラック」というのはよく言われていることですが、案件を選択できれば結構ホワイトな業界じゃないかと思っています。(椅子に座って仕事しているフリをいればいいし)
そういう意味では、この「仕事の選択権」はすごく大きいです。精神的ストレスの大きさが全く違います。
で、この「仕事の選択権」を捨ててまで、あえて会社員として就職しようとするのってすごく抵抗があるんですね。だって、一回フリーランスをやってしまうと、この辺りの旨みが肌でわかってしまうし、むしろ「仕事の選択権」を捨てることを怖いと思ってしまう。
これはある意味、フリーランスになったことのデメリットでもあると思うのですよね。コネの構築や技術の習得のために会社員になった方がいい場合でも、「会社員は馬鹿らしくてやってられない」、「会社員は怖い」と思ってしまう。つまり、キャリアの選択肢が狭まってしまっています。
フリーランスになってしまうと、後戻りして会社員になるのは難しいです。それは、採用する側の問題ではなく、エンジニアの気持ちの問題です。
とはいっても、フリーランスから会社員になった方も周りに多くいます。こういう方は、話を聞く限り、フリーランスとしての不安定さによる居心地の悪さに耐えれなかったというケースです。
結局のところ考え方は人それぞれということですが、フリーランスに居心地の良さを感じる方は、もう会社員ではやっていけないと覚悟をした方がいいかと思います。
今更ながら「フリーランス残酷物語 Advent Calendar 2016」を読んでみて
皆さん、あけましておめでとうございます。
お正月休みということでしばらくブログ更新をサボっていました。
さて、昨年Qiitaでフリーランス残酷物語というAdvent Calendarが催されていました。もちろん私は書いていませんが、なかなか興味深い内容も多いです。
みなさん結構よく書いていて、よくある「フリーランスとは」というものから、自分自身の悲惨な体験談など様々です。ただ、残酷物語と謳っている割には残酷でもなく、この点ではみなさんフリーランスとしてそこそこ上手くいっているようですね。
この中で一つ気になったのは以下のエントリです。
大まかには、会社から独立し、コネなしでフリーランスになってみたものの、仕事取れなくて詰んでしまったという内容でした。これは独立して失敗する典型的な例ではないかと思います。ここまでひどい例ではなくても、仕事の取り方がわからず、胡散臭い営業に捕まって、カモにされている例は周りでも聞いたりします。
ちなみに、私が経験した残酷な話としては、
- 後から条件を勝手に変更してくるクライアント
- 受注金額と異なる金額を振り込んでくるクライアント
などなどお金がらみの話が多いです。やはりフリーランスという立場上、なめられやすいというのがあり、気をつけなければならない点であると思いますね。
知り合いのワンマン企業では、取引先から数百万の金額で支払い遅延があったそうです。その企業ではそれ以来、顧問弁護士を置くようにしたとか。
そういう面倒ごとが嫌ならばエージェントを通す方が安心かもしれませんが、取引先の目利きというのも自営業者のスキルの一つなわけで、避けては通れないところではあると思います。
フリーランスの交渉の仕方
フリーランスエンジニアの方は、交渉に弱いというか、お人好しタイプが多く、顧客の要望をそのまま受け入れてしまって、したたかに交渉できる人は少ないです。また、そもそもそも交渉の仕方もわからないため、「単価を上げてください」など、ただのお願いになってしまっているケースも多いです。
交渉というものは、 自分の手持ちのカードは何か、相手にどんなカードを切らせるかを意識しながら、お互いの着地点を探すことです。ただ、一方的にお願いすることは交渉ではありません。
フリーランスエンジニアの交渉の主なカードは、一番重要な「単価」、あとは「契約期間」、「仕事内容」、「ポジション」などです。
この中から、自分が相手に要求したいことと、相手が自分に要求したいであろうことを考えながら交渉することが大事です。
交渉に臨む態度
柔らかくかつしたたかにがポイントです。相手に不要な嫌悪感を持たせても特になることはありません。一方で安易に妥協してしまってもしょうがありません。粘り強く交渉するしたたかさも必要です。
事前に落としどころを決めておく
自分の譲れるところ、譲れないところを予め決めておきましょう。ここを決めておかないと、結果として交渉時の気分で必要以上に譲歩してしまい、後で後悔ですることになります。
たとえば、「時間精算なしはやらない」、「単価は80万円以上」など明確な基準を決めておきましょう。
ただでは譲歩しない
顧客から譲歩を要求されることもあるでしょう。
しかし、交渉の場では、絶対にただで譲歩してはいけません。
たとえば、来月末で抜けさせてくれと申し入れをした際に、「いや、来月末で抜けられては困るから、あと半年はいてくれ」と要求されるというのはよくあるケースです。
このお互いの利害が衝突した時こそ交渉のチャンスです。ただ単純に、「はいOKです。」と相手の要望を受け入れてしまうのではなく、交換条件として単価の値上げや仕事内容の変更をセットに交渉しましょう。顧客側がどうしても契約期間を延長したい場合、こちら側の要望が受け入れられる確率が高いです。
(まぁ、そもそもこういう場合は、顧客側から単価の値上げとセットで交渉されることも多いですが・・・。)
ただし、言い方次第では相手の足元を見て交渉しているように取られ心象を悪くすることもあるので、気をつけたほうが良いです。交渉は腰を低く粘り強くやるのが重要です。
逆にこの様なケースにおいて、何か都合があってどうしても抜けたい場合もあるでしょう。その際に顧客から、「単価を上げるから辞めないでくれ」と言われることもよくある話です。
こういう場合、安易に交渉のテーブルに着かないことです。交渉のテーブルについてしまうと、相手に「条件次第では契約延長してくれるのか」と思わせてしまい、面倒なことになります。
話は変わりますが、案件参画時に単価交渉する際にも、希望単価は高めに言っておいたほうがよいです。要望がそのまま通れば儲け物ですし、仮に単価が折り合わず、負けなければいけなくなった場合でも、「単価を値切って案件に参画した」という貸しを作ることができます。このように、手持ちのカードを意識した交渉をすることが大切です。
ブラック案件を避ける3つの判断基準
この業界にはたくさんの案件があります。金額の高い低い、稼働が高い低いなど、様々な案件がありますが、今回は私がオススメしない案件について書いていきます。
フリーランスは体が資本ですので、心身を壊すようなかことがあってはいけません。今回のエントリで書くオススメしない案件というのは、この心身を壊す可能性が著しく高くなるであろう案件です。
といっても、案件の概要だけでは案件のブラックさを判断することは難しいでしょう。たしかに、実際に現場に参画してみないとわからないことも多いとは思います。
それはそのとおりですが、案件の概要からでもある程度ブラック度の高い低いを見分けることはできると思います。
私が以下の観点で、案件の高ブラック率案件を判定しています。
- 時間精算なし
- 金融系
- 有名ブラック企業の案件
時間精算なし
ほとんどの常駐案件は精算幅を設けていますが、たまに時間精算なしという案件もあります。これはそもそも企業側が長時間労働を前提としていることであり、案件参画後、かなり稼働が高くなることを想定しておかなければなりません。
金融系
金融系、特に、銀行、証券では危ない噂をよく聞きます。実際に私も証券系の案件に参画したことがありますが、やはりブラックでした。エンドユーザー自体が体育会系ですので、それに引きづられる形で開発現場もストレスフルでした。
基本的にお客様が神様であり、無理な要求には徹夜してでも答えるという雰囲気があり、とても辛かったです。
有名ブラック企業の案件
ご存知の通り、この業界には無茶な開発を行っている企業がいくつもあります。大概、そのような情報は営業やフリーランスの間で共有されています。コネを作っておくとブラックな情報を入手する際にも役に立ちます。
私の知っている限りだと、日本橋の交差点にある会社や、センター南(北?)にある会社は色々とヤバイということを聞いたことがあります。
普段からコネを作り情報共有しておきたいところです。
繰り返しますが、フリーランスは体が資本です。ボロ雑巾のように使い潰され、心身を壊すようなことがあってはいけません。会社員ならば休職中も給料が入りますが、フリーランスでは休んでいる間は無収入です。ですので、フリーランスこそできるだけブラック案件は避けるべきです。
しかし、実際、案件の選択に失敗することもあると思います。ブラックな案件に参画してしまった場合、どうすればよいのか。それについてはいつか書きたいと思います。